東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-30
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一般口述
身体面の予後予測と、精神面に配慮した住宅改修を行うことで、在宅生活が継続できている脊髄小脳変性症の一症例
*曽我部 知明曽我部 芳美川崎 貴覚
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抄録

【はじめに】 今回の診療報酬・介護報酬の同時改定により、在宅生活支援への加算が増え理学療法士(PT)の在宅支援への必要性が高まっていることが伺える。住宅改修にPTが関わる機会は多いが、身体面へ注意が行き過ぎ精神面への配慮が十分になされていない場合がある。今回、演者が所属するボランティアサークルの高齢者と障がい者の住まいと暮らしの相談会へ相談があった脊髄小脳変性症患者に対し、身体面の予後予測と、精神面に配慮した住宅改修を行うことで在宅生活が継続できたため報告する。
【方法】 平成21年1月住宅改修完成時点の情報として、対象は40代男性、3人暮らし。社会資源は身体障害者手帳2級、介護保険要支援1、介護サービスとして週1回半日のデイサービスを利用していた。生活状況として、ADLは完全自立、自宅内移動は膝装具を両膝に装着し4点杖歩行自立。外出は自分で車を運転し行い、外出先では車椅子を使用し移動していた。転倒歴は多く、月に1回以上転倒していた。平成20年8月食堂にて転倒し腰椎の圧迫骨折をしたことにより転倒への不安が更に増加したため、住宅改修を行うこととなった。相談者の希望は、プライバシーを確保したい、安心して生活できる環境を獲得したい、車の運転が継続したいであった。
【説明と同意】 研究協力症例に対し説明を行い、文章にて同意を得た。
【結果】 改修前の居室は来客の多い台所横であったため、プライバシーに配慮し居室の位置を移動した。床面は滑りやすい畳から、保温と転倒時の衝撃の緩和を考慮し杉板に変更した。新しい居室から浴室までの段差解消を行った。外出を容易にするため玄関の形状の変更と手すりの設置を行った。また、身体機能が低下し、車椅子生活となった場合の段階的な改修の提案も行った。以上により改修後3年以上経過した現在もADL自立の状態で車の運転も継続できている。身体機能にも大きな低下はなく、新たな住宅改修も行っていない。社会資源に関しても全く変化はない。
【考察】 今回の住宅改修により生活動線は長くなっているが、プライバシーは確保され外出もしやすくなったことで活動性の高い前向きな生活が保たれ、身体機能の低下を最小限にできた。身体機能の予後予測に基づいた段階的な住宅改修を提案したことで、車椅子生活になっても在宅生活が継続できるという安心感を与えることが出来た。
【まとめ】 PTの行う身体機能評価、予後予測、動作分析は利用者の生活の自立度、満足度を高めるための住宅改修や福祉用具の導入にあたり重要な情報である。在宅生活を継続するためには身体面のみならず精神面への配慮も重要であり、それを実現するために専門職が連携することが要求される。生活の多様化により、PTに求められるサービスの質はますます高くなっている。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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