東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-35
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一般口述
客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinica Examination)を用いた療法士教育における卒後教育の再考
*渡 哲郎本谷 郁雄志村 由騎小山 総市朗金田 嘉清櫻井 宏明
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キーワード: 新人療法士, 卒後教育, OSCE
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抄録

【目的】 養成校増加に伴い療法士数は飛躍的に増加し、臨床現場における経験年数の若年化という状況を生じている。当院リハビリテーション科においても新人療法士は全体で30%を占めており、院内勉強会や経験者による臨床指導の研修を行っている。しかし、様々な指導により教育方法が統一されないという現状から臨床能力の把握と指導方法の標準化が必要と考えた。そこで、客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination:以下OSCE)を導入し、新人療法士の臨床能力の把握、問題点抽出から臨床指導方法を検証したので報告する。
【対象】 平成24年度入職の新人療法士19名(理学療法士13名、作業療法士6名)。平均年齢22±0.5歳。
【方法】 OSCEは藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科が作成した療法士版OSCEを使用した。評価者2名、模擬患者1名、課題は入職後最も患者に施行すると考えられた関節可動域測定(以下:ROM)・徒手筋力検査法(以下:MMT)・起き上がり動作補助/誘導・移乗動作補助/誘導の4課題を選択した。評価は4月、5月に施行した。評価方法は各課題の問に対し[good]2点、[fair]1点、[poor]0点で評価し、各課題の得点率(%)を算出した。4月評価後、対象者19名を5月評価までの1ヶ月間にて臨床指導とOSCEからの問題点を基にした臨床技術教育を行うAグループと臨床指導のみを行うBグループに分け、4月・5月でのグループ間の結果を比較した。統計学的分析はWilcoxonの符号付順位検定を用い、有意水準は0.05未満とした。
【結果】 得点率は、4月評価時でAグループはROM:58.2±20.8%、MMT:65.7±14.6、起き上がり動作補助/誘導:35.7±21.3%、移乗動作補助/誘導:58.3±27.9%、BグループはROM:56.9±17.5%、MMT:56.9±13.7、起き上がり動作補助/誘導:38.9±22.2%、移乗動作補助/誘導:55.6±22.4%であり全ての項目でグループ間有意差はみられなかった。5月評価時でAグループはROM:91±10.4%、MMT:92.6±4.6、起き上がり動作補助/誘導:75.4±12%、移乗動作補助/誘導:83.7±12.8%、BグループはROM:73.3±16%、MMT:64.2±19.4、起き上がり動作補助/誘導:42.9±26.8%、移乗動作補助/誘導:55.3±21.5%であり全ての項目においてグループ間有意差を認めた。
【考察】 Aグループでは臨床指導とOSCEからの問題点を基に行った臨床技術教育にて得点率の向上を認めたが、Bグループでは得点率の向上を認めなかった。Bグループも臨床指導が行われたが、Aグループの得点向上から、基本的な臨床能力を早期に向上させるには、その臨床技術に関する技術教育を行う必要性が示唆された。OSCEから得られる問題点を基に行う臨床技術教育は新人療法士の臨床能力の向上と均一化を進めることの一助になると考えられた。
【まとめ】 今回、入職した新人療法士の臨床能力を客観的に把握した。それを基に行う臨床技術教育は新人療法士の臨床能力を均一化させる教育となる可能性が示唆された。今後の展望として、5月OSCE後にBグループにも臨床技術教育を行い、教育介入時期について検討していきたい。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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