東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-38
会議情報

一般口述
レントゲン側面像による頚椎の運動ユニットの動き
*太田 佳孝
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】 頚椎の矢状面の運動学については、頚椎全体からみた可動域や不安定性についての報告が多い。今回、隣接2椎体間の動きから頚椎全体の運動パターンや可動性をしるために、頚椎の隣接2椎体を最少運動ユニットとして考えた。頚椎伸展時の動きを評価するため、立位中間位から可及的伸展位のレントゲン側面像で、この運動ユニットがどのように動くかを調査した。今回、この運動ユニットの中間位から可及的伸展位までの運動パターンや可動性の特徴を報告する。
【方法】 対象は交通事故による軽度の被追突例のうち頚椎の経年的な脊椎変性が少ない5歳から29歳(平均年齢20.4±7.1歳)、男33名、女26名、合計59名の症例である。方法は頚椎の隣接する椎体間の運動(角度)を、頚椎中間位、可及的伸展位の矢状面レントゲン撮影像で計測した。頚椎の運動ユニットは、運動力学上便宜的にC1椎体下半分/C2椎体上半分とした。隣接2椎体の運動ユニットの動きは、下位椎体の椎体部の後上方角よりその椎体の棘突起先端と上位椎体の棘突起先端に引いた2直線の角度であらわした。運動ユニットの中間位の角度から伸展位の角度を引いた角度(N-E角)を隣接椎体間の運動(角度)とした。
【結果】 N-E角は、C1/2ユニットで平均8.2±6.1°、C2/3で4.4±3.3°、C3/4で8.0±3.9°、C4/5で8.4±4.8°、C5/6で5.9±5.0°、C6/7で0.6±4.3°、C7/Th1で-3.5±3.8°であった。N-E角が負の値のものは、C1/2ユニットで3例(全症例の5.0%)、C2/3で6例(10.1%)、C3/4で0例(0.0%)、C4/5で1例(1.6%)、C5/6で5例(8.4%)、C6/7で23例(38.9%)、C7/Th1で50例(84.7%)であった。
【考察】 頚椎の矢状面での運動学は、頚椎全体からみた屈曲、伸展を合わせた全可動域や不安定性について分析されることが多い。そこで、頚椎の隣接する上位と下位の椎体の動きに着目し、その2椎体を最小運動ユニットとして考えた。運動ユニットの上下椎体は、椎間関節と椎間板が介在する椎体間関節により接触し、上位椎体は下位椎体に対して後下方へ滑ることにより頚椎を前弯させる。今回、運動ユニットの伸展時の動き(伸展角度)は、下位頚椎のC6/7ユニットは0.6±4.3°と小さく、C7/Th1ユニットは-3.5±3.8°と負の値であった。N-E角が負の値の症例は、C6/7ユニットで全体症例の38.9%、C7/Th1ユニットで84.7%にみられた。この結果から、下位頚椎の運動ユニットは下位頚椎を前弯する動きとともに、運動ユニットの上位椎体が下位椎体に対して微少に前上方へスライドすることにより、椎体間の角度を大きくする。頚椎の運動ユニットに作用する筋は、内在脊椎筋に加えて胸鎖乳突筋がある。頚椎伸展時には、胸鎖乳突筋は頚椎を前弯させながら前方に牽引する力源となる。この動きは、頚椎全体の伸展角度(前弯)を減少させずに頭部の重心を体軸に近づける効果がある。
【まとめ】
 ・下位頚椎のC6/C7ユニットのN-E角の平均値は小さく、C7/Th1ユニットは負の値であった。
 ・C7/Th1ユニットのN-E角が負の値の症例は、全体症例の84.7%にみられた。
 ・胸鎖乳突筋のはたらきは、予想と反する動きをC7/Th1におこす。

著者関連情報
© 2012 東海北陸理学療法学術大会
前の記事 次の記事
feedback
Top