抄録
糖質の持つ生物学的意義が明らかになるにつれ、糖質の機能を分子レベルで理解するためのツール分子として、さらには糖鎖関連疾患の診断・治療薬のリードとしての糖結合分子 (CBM) の学術的重要性は急速に高まっている。特に、合成および化学修飾が容易な低分子型のCBMには大きな関心が寄せられている。本稿では、非共有結合によって糖を結合する低分子型CBMに焦点を当て、超分子化学の分野での進展が目覚ましい人工CBMについて、その代表的な分子設計と最新の研究成果を概説する。さらに、唯一の天然由来低分子型CBM群であるpradimicinとその類縁体にもスポットを当て、これらレクチン様天然物の類稀なカルシウム依存的マンノース結合機構に関する最新の知見についても紹介する。