Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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GPI-アンカー型HRP融合タンパク質を用いるEMARS法による脂質ラフトの分別
Arisa Miyagawa-YamaguchiNorihiro KotaniKoichi Honke
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2014 年 26 巻 149 号 p. 59-69

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抄録

脂質ラフトは、シグナル伝達や細胞接着やタンパク質輸送など重要な生命現象のプラットフォームを提供する。これら生命現象の分子メカニズムを解明するためには、個々のラフトドメインにおいて相互作用する分子を同定する必要がある。筆者らは探索分子の上に固定した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)から300 nm以内の近傍に存在する分子を標識する新奇のEMARS法を開発した。最近、筆者らは、遺伝子工学で発現させたHRPを用いてEMARS反応を行う新バージョンのEMARSシステムを樹立した。HRPを脂質ラフト内に発現させるため、HRPをGPI-アンカー型にした。ヒト崩壊促進因子(DAF)とヒトThy-1由来のGPI付加シグナル配列をそれぞれ別個にHRPのC末端に連結した2種類のGPI-アンカー型HRP融合タンパク質(HRP-GPI)をヒトHeLa S3細胞に発現させ、生きている細胞上でこれらのHRP-GPIを用いてEMARS反応を行った。その結果、異なるGPI付加シグナル配列をもつHRP-GPIは、異なるN型糖鎖付加を受け、異なる分子会合体を形成した。今回開発した新しいアプローチは、特定のGPI-アンカータンパク質と会合する分子クラスターを同定することができる。つまり、この方法を用いることにより、個々の脂質ラフトドメインを分別することができる。

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© 2014 FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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