ジストログリカンは高度な糖鎖修飾をうける膜タンパク質で、細胞外マトリックスやシナプス分子の細胞表面受容体として機能する。ジストログリカンがリガンドと結合するためには、
O-マンノース型の糖鎖修飾が必要で、なかでも、
O-マンノース上にリン酸ジエステル結合を介して存在する“ポストリン酸構造”と呼ばれる修飾体が、リガンド結合に直接関与するドメインと考えられている。最近、ポストリン酸修飾にかかわる分子がいくつか同定され、精密な機序によって修飾が制御されていることがわかってきた。ジストログリカンは骨格筋の維持や脳の形成など、さまざまな組織で重要な役割を担っているが、その一方で、ジストログリカンの糖鎖異常はジストログリカノパチーと総称される、脳奇形(II型滑脳症)や精神発達遅滞などの中枢神経障害を伴う筋ジストロフィーの原因になる。本稿では、ジストログリカンの糖鎖構造、修飾機序、糖鎖機能と疾患との関連について概説する。
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