2018 年 30 巻 172 号 p. SJ11-SJ24
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)は、母乳栄養児においてプレバイオティクス,感染防御,免疫調整,腸管成熟などの生物機能を担っている。感染防御や抗炎症などの機能性にはガレクチン,セレクチン,シグレックなどのレクチンと多種類のHMOとの相互作用が関わっていると予想される。一方100種類以上含まれるHMOはHタイプ1,ルイスa,ルイスb,ルイスx,シアリルルイスa,シアリルルイスxなどの構造単位を有しているので、各種内在性レクチンやモノクローナル抗体、ウィルスカプシドタンパク質、細菌毒素などの糖結合特異性研究用やレクチン阻害剤の開発のためのツールとしての活用が期待できる。このミニレビューは、最近の構造解析結果も含む網羅的なHMOの構造データセットをガレクチンの糖結合特異性などの研究のための情報ソースとして提示している。またミルクオリゴ糖の機能や利用についての最近のin vivoならびにヒト臨床研究例の紹介も行った。