2018 年 30 巻 176 号 p. J137-J143
タンパク質への糖鎖修飾は真核生物が共通に持つ翻訳後修飾の一つであり,様々な生物学的プロセスに関わっていることが知られている。長年にわたり続けられてきた糖鎖研究による知見の蓄積から,糖鎖生合成の経路および糖鎖修飾の持つ様々な生物学的機能についての詳細が明らかとなっている。同様に糖鎖の主要な分解経路について,即ちリソソーム依存的な糖タンパク質・糖脂質の分解経路やその生物学的意義,疾患との関連についても明らかとなっている。一方,真核生物の細胞質にはタンパク質と結合しない遊離した状態で存在する糖鎖,遊離N型糖鎖(fNGs)が絶えず生成され,リソソーム非依存的に分解されていることが知られているが,その詳細ついては不明な点も少なくはない。本稿では,種々の真核生物の解析により近年明らかとなってきた,fNGsの構造・代謝経路およびその生物学的意義について,生物種間での比較を交えながら概述を試みたい。