2019 年 31 巻 181 号 p. SJ67-SJ68
糖鎖の精製や合成の技術の進歩にともない、構造多様性をひとつの特徴とする糖タンパク質や糖脂質の糖鎖のうち主要な構造の一部は比較的容易に入手できるようになってきた。しかし、天然には微量しか含まれていないような大きな糖鎖構造を純粋に得ることはいまだ簡単なことではない。そこで、糖鎖構造の全長をそのまま扱うより、望む部分構造(配列)を研究にうまく用いることで、糖鎖の機能解明につながることも多い。そのひとつに糖鎖エピトープがある。レクチンのような糖鎖認識タンパク質の多くは、糖鎖エピトープと呼ばれる数糖程度の決まった構造単位を認識する「パターン認識」機構を有する。このような数糖程度の糖鎖エピトープであれば、一般的な糖ユニットから構成されているものは化学合成により比較的容易に得ることが可能である。ここでは、化学合成によって得られた糖鎖エピトープを用いた、糖鎖間の相互作用解析例と糖鎖–タンパク質間の相互作用解析例を筆者の携わったものと周辺の研究をあわせて紹介する。