Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー(日本語)
スフィンゴ糖脂質の脂質ラフトによる病原体認識応答機構
中山 仁志 岩渕 和久
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2019 年 31 巻 184 号 p. J139-J147

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抄録

好中球やマクロファージ、樹状細胞のような貪食細胞は、自然免疫システムにおいて、非常に重要な役割をしている。自然免疫反応は、病原体特有の分子構造(PAMPs)と貪食細胞が発現する様々なパターン認識受容体(PRRs)との結合により開始される。貪食細胞において、スフィンゴ糖脂質(GSL)は、コレステロールやグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型タンパク質、多様なシグナル伝達分子と共に集まり、GSLの脂質ラフトを形成する。このようなGSLの脂質ラフトは、PAMPs等を介して様々な病原体に結合することから、自然免疫における宿主–病原体相互作用にとって非常に重要であることが示唆される。中性のGSLであるラクトシルセラミド(LacCer, CDw17)は、カンジダや抗酸菌を含む様々な病原微生物へ結合する。LacCerは、成熟ヒト好中球の細胞膜と顆粒膜に発現し、細胞内情報伝達分子と共に脂質ラフトを形成する。このようにして形成されるLacCerの脂質ラフトは、遊走や非オプソニン条件下における貪食、活性酸素の産生を仲介することができる。またLacCerの脂質ラフトは、細胞膜上において、CD11b/CD18インテグリン(Mac-1, CR3、あるいは、αMβ2-インテグリンとも呼ばれる)の情報伝達プラットフォームにもなる。これらは、ヒトの多様な自然免疫反応におけるLacCerの重要性を示している。とりわけ、LacCerの脂質ラフトと抗酸菌由来のリポアラビノマンナン(LAM)との相互作用は、好中球による非オプソニン抗酸菌の貪食機構において極めて重要である。このミニレビューでは、ヒトの貪食細胞におけるLacCerの脂質ラフトの機能的役割を、最新の知見とともに概説したい。

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© 2019 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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