2020 年 32 巻 187 号 p. J79-J84
糖鎖機能の構造基盤を正しく理解するためには、立体構造の揺らぎを含めた動態としての描象が重要となる。常磁性効果を活用した核磁気共鳴(NMR)法と、分子シミュレーションを組み合わせることで、糖鎖の動的立体構造を解析する方法論を確立した。この手法により、ガングリオシドの糖鎖構造や、糖タンパク質の品質管理に関わる高マンノース型糖鎖のコンフォメーションを明らかにした。さらに、静的な構造解析だけでは捉えることができない、レクチンと糖鎖の動的な相互作用機構についても理解が進んだ。標的タンパク質に対する親和性や特異性を高めるために、遊離糖鎖の配座空間探査に基づいた新たな分子設計を行うことも可能となってきた。