Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ミニレビュー(日本語)
S. cerevisiaeの胞子が持つユニークな性質とその応用
Liu Guoyu高 暁冬 中西 秀樹
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電子付録

2020 年 32 巻 190 号 p. J165-J169

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抄録

出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの二倍体細胞は、栄養が枯渇すると休眠状態の細胞である胞子を形成する。胞子は、栄養増殖細胞に比べてより複雑な細胞壁(胞子璧)を有している。胞子壁は四層(内側からマンナン、グルカン、キトサン、ジチロシン層)から形成されており、マンナン層、グルカン層は栄養増殖細胞でも見られる構造であるが、キトサン層、ジチロシン層は胞子壁に特有な構造である。キトサン層、ジチロシン層は、例え欠損しても胞子の生育能に影響はない。しかしこれらの構造は、ストレス耐性など、胞子に特有な性質を付与する。本稿では、これらの構造を中心に、胞子が有するユニークな構造や性質を紹介する。さらに、そのような性質を利用した胞子の応用例を紹介する。例えば、ジチロシン層を欠損させた胞子はキトサン粒子としての利用が可能である。また胞子では、分泌タンパク質が胞子壁内に滞留するため、分泌型酵素を発現させた胞子は酵素カプセルとして利用できる。

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© 2020 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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