2021 年 33 巻 192 号 p. J21-J26
精神的ストレスは、しばしば腸の機能障害と腸内細菌叢の撹乱をもたらす。慢性社会的敗北ストレス(CSDS)は、げっ歯類におけるヒトの気分障害とうつ病のモデルとしてよく用いられている。我々は、C57BL/6JマウスでCSDS負荷が盲腸および糞便の細菌叢を変化させ、小腸の免疫応答に関与する遺伝子発現を低下させることを報告した。レクチンマイクロアレイ解析によりCSDS負荷マウスの腸管の糖鎖プロファイルを分析したところ、CSDS負荷は小腸下部のα1,2-フコースを有意に低下させた。このα1,2-フコースの低下は、大腸や小腸上部では認められなかった。α1,2-フコシル化糖鎖は、腸管上皮細胞および分泌タンパク質で検出される主要な糖鎖であり、宿主と腸内共生細菌の間の相互作用を担う因子であることが知られている。CSDS負荷は腸管上皮のα1,2-フコースを減少させることで、腸内細菌叢を変動させる可能性がある。