2025 年 37 巻 219 号 p. J47-J51
がん関連糖鎖抗原の一種であるSialyl-Tn(sTn)抗原の発現はがん患者の予後の不良と強く相関する腫瘍マーカー分子として臨床の現場で用いられているが、その病態形成における役割は未だ十分理解されていない。がんの進展過程においては腫瘍組織内の直接的、間接的細胞間相互作用を介したがん微小環境の調節が重要な鍵を握る。近年、本研究グループはsTn抗原ががん細胞における細胞外小胞の産生を活性化させ、Focal adhesion kinaseを標的細胞に伝達することを明らかにしてきた。本総説では、がん微小環境において誘導されるsTn抗原が、がん微小環境のリモデリングやがんの進展において重要な役割を果たすことを紹介したい。