Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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澱粉分解活性をもつヒトアブザイム
Anna A. KulminskayaAndrew N. SavelievKirill N. Neustroev横山 三紀
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2004 年 16 巻 87 号 p. 17-31

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抄録

澱粉分解活性をもつアブザイムが酵素活性をもつヒト抗体の新しいタイプとして最近発見された。自己免疫疾患患者の血清やヒトの母乳にはマルトースオリゴサッカライド、澱粉、グリコーゲンや人工基質のα-(1,4)-グルコシル結合を加水分解する活性をもつさまざまな免疫グロブリンがあることが知られていた。臨床的に多発性硬化症や全身性エリマトーデスであると診断された数十人の患者のIgM分画は健常者のものと比較して澱粉分解の比活性が約千倍高い。ヒト母乳のIgG, IgAの活性の平均値は比活性にして自己免疫疾患患者のIgMの五分の一以下であった。アブザイムの活性は抗体そのものがもつ性質であって酵素の混入によるものではないことを証明するための厳密な実験がおこなわれてきた。アブザイムのIgMとIgG分画をFabフラグメントにしても同程度の活性を示した。還元末端に発色団や蛍光標識をもつさまざまなマルトースオリゴサッカライドに対するアブザイムによる分解活性のKMは1~2mMから0.01mMであった。異なるドナーからのアブザイムはミカエリスメンテン値の不均一性を示し天然基質や人工基質の分解様式にも差異がみられた。あるものはエキソ型アミラーゼ活性を示し、またあるものはグルコースを遊離するα-グルコシダーゼ活性を示しp-ニトロフェニル-α-D-グルコピラノサイドを分解できた。調べられたすべての澱粉分解活性をもつアブザイムの酵素的性質はヒトのα-アミラーゼと異なっていた。IgM, IgG, sIgAはいずれもトランスグリコシレーション活性を示さなかった。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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