抄録
細胞外マトリックスは組織や器官に骨組みと安定性を与えるものである。また、構成細胞と相互作用し、細胞の行動に影響する情報を提供する。ラミニンは細胞外マトリックス成分が極めて発達した形である基底板の主要な構成因子である。成熟した組織や器官では細胞は基底板に堅く接着しているが、胚組織では基底板は発生の過程の制御に役立っていると考えられている。細胞はラミニンの構造上の特徴を認識することにより、その伝達する情報に応答する。ラミニンの全体の分子構造、ポリペプチドサブユニットの含有量やアミノ酸配列、糖組成、N-グリコシド結合型糖鎖の構造までを含めた包括的な分子構造モデルは既に確立されている。蛋白質部分と糖部分の両方がラミニンに対する細胞の認識や応答に係わっている。我々はここで、特にラミニンの糖鎖部分が細胞応答に関与する際に、その推定される役割に焦点を当て、ラミニンの構造と生物活性について現在までの知見を概説する。細胞表面とラミニンの相互作用モデルが幾つか提唱されている。これらの相互作用に関する知見がさらに発展すれば、ラミニンの糖鎖部分が細胞応答を促進する作用機構について、よりはっきりした定義がなされよう。