抄録
Ep-CAMは、上皮細胞の細胞間接着分子として最近同定された物質である。その細胞間接着はCa2+に依存せず、同一分子間で行われる。この膜貫通糖タンパク質は分子量は40kDaで、接着分子としては異常に小さい。Ep-CAMの細胞外ドメインは、2個のEGF様ドメインに続いてシステインに乏しい領域がある。この構造は、Ep-CAMが4種の主な細胞接着分子すなわちカドヘリン、インテグリン、セレクチンとイムノグロブリンスーパーファミリーに属する接着分子とは全く異なるものであることを示している。Ep-CAMは、単純な移行上皮や多列上皮に大量に発現されているが、扁平上皮では発現されていない。しかし増殖や腫瘍化に伴って、扁平上皮でもこの分子の新たな発現がしばしば認められる。Ep-CAMは、上皮細胞由来の細胞以外では発現されない。Ep-CAM分子の正確な生物学的役割はまだ分からないが、今までに得られている証拠から細胞間の相互作用、細胞型の分離、組織パターンの形成などの調節や組織構築の支持に関与していると推測される。