Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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肝内皮細胞のヒアルロナン受容体
Stefan Gustafson山形 貞子
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1996 年 8 巻 39 号 p. 13-21

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抄録

結合組織の多糖類であるヒアルロナン (ヒアルロン酸、HA)は、肝臓の内皮細胞 (LEC) が受容体を介したエンドサイトーシスを行うことにより、循環系から極めて効果的に除かれる。肝硬変のような肝疾患が起こると、LECによるHAの取り込みが減少してHAの血清濃度が増加する。
少なくとも2種の異なる受容体活性がLEC表層には存在する。そのひとつはカルシウム依存性で直接にはエンドサイトーシスには関与していないようである。もう一つはカルシウム非依存性でエンドサイトーシスを仲介する。受容体はコンドロイチン硫酸やデキストラン硫酸のようなHA以外のリガンドも認識するので、その点でスキャベンジャー受容体に似ている。高分子量HAは低分子量HAより受容体に対して高い親和性を持ち、受容体が認識する最小のオリゴ糖は6糖である。
エンドサイトーシスの受容体はリサイクルされ、多糖の運搬を仲介する。多糖はリソゾームに運ばれ、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸に分解される。肝細胞では単糖は細胞質に運ばれて最後には水、炭酸ガスと尿素にまで壊される。
LEC上のHA受容体の分子としての性質は完全には明らかではない。受容体と思われるものの一つはHAのフォトアフィニティプローブと結合することにより得られた340kDaタンパク質であるが、まだシークエンスされていない。別の受容体と思われるものは95kDaのタンパク質で、可溶化したLECをHA結合アガロースを用いてアフィニティクロマトグラフィーを行い、HAオリゴ糖で特異的に溶出して得られた。この95kDaのタンパク質は最近一部分がシークエンスされ、細胞間接着分子1 (ICAM-1) と同一の配列を持つことが見いだされた。ICAM-1の局在性はHAの結合や取り込みを行っている組織や細胞とよく一致している。スキャベンジャー受容体に対するリガンドを用いた阻害の研究から、このタイプに属する分子はHAによく結合することが示されている。
生理学的及び病理学的条件下で見られるHAの代謝についてのいくつかの現象は、HAのICAM-1及び/またはスキャベンジャー受容体への結合によって説明することができる。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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