時間学研究
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「炎上」現象の定量的評価を目的とした炎上状況の指数化と時間単位の研究
インターネット掲示板を対象に
加藤 三四郎小山 恵美川北 眞史
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2017 年 8 巻 p. 45-62

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抄録

インターネット掲示板などの自己発信が可能なメディアの普及に伴い,企業がいわゆる「炎上」の被害を受けるリスクも増加している。本研究では,「炎上」の被害を最小限に留めるため,インターネットの掲示板を対象に「炎上」を定量的に評価する手法を提案する。具体的には,投稿数が日内変動することを考慮して求めた「炎上値」という新たな評価尺度を導入して「炎上」の状況を指数化し,時間に伴う変動をその波形により把握することを試みた。しかし,インターネット掲示板の特性上,物理的時間を時間の単位とすると「炎上値」の波形が実態を反映しない場合がしばしばみられた。そこで,インターネット掲示板での一定数の投稿のかたまりを表す「スレッド」を時間の単位として「炎上値」を新たに算出した。炎上値の波形は,時間の単位に「スレッド」を用いた場合,物理的時間を用いた場合に比べ,より平滑化された。これにより,「炎上」しているかどうかの判別も容易になると考えられる。また,「炎上」を定量化したデータを用いて,「炎上」の予見などに関する研究を行う際にも「スレッド」を時間の単位としたほうが有効である可能性も示された。一例として,この時間単位を用いて炎上値と特定の単語・記号の投稿数との時差相関分析を行うことで,投稿者同士のコミュニケーションの減少は「炎上」の予兆となる可能性が示唆された。今後の課題として,本研究の成果をもとに,炎上値の波形及び投稿内容から定量的に炎上の始まりと終わりを判定するアルゴリズムを作成する必要があると考える。

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© 2017 日本時間学会
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