東北森林科学会誌
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実験的な濁水供給にともなうミズナラ林とスギ林の浸透能低下
阿部 俊夫 岡本 隆篠宮 佳樹
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2020 年 25 巻 1 号 p. 10-13

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抄録

濁水供給 (懸濁物質負荷) が林床の浸透能に与える影響を明らかにするため野外実験をおこなった。森林総合研究所東北支所構内の隣接するミズナラ林とスギ林にステンレス製円筒枠を各 5点設置し,浸透能を計測した後,懸濁物質としてカオリンクレー5.0gを含む濁水を注入した。この操作を浸透能が大きく変化しなくなるまで繰り返した。実験 終了から 4ヵ月半後,9ヵ月後の浸透能も計測した。基本的に浸透能は懸濁物質負荷量が増えるほど低下しており,懸濁物質による表層土壌の目詰まりが原因と考えられた。降雨があると浸透能がわずかに回復する傾向も認められた。実験終了から 9ヵ月後でも浸透能は十分には回復しなかった。ミズナラ林はスギ林より実験開始時の浸透能が高かったが,濁水供給による浸透能低下はミズナラ林の方が相対的に大きく回復も遅かった。今後,低下した浸透能の回復にどのような要因が影響するのかを研究することも必要と考えられる。

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