日本シミュレーション学会論文誌
Online ISSN : 1883-5058
Print ISSN : 1883-5031
ISSN-L : 1883-5058
論文
移動音の移動方向知覚に関する研究 ―適応法による検討―
瀧澤 哲工藤 彰洋武居 周
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 14 巻 2 号 p. 71-77

詳細
抄録

本研究では,仮想空間における広帯域雑音のMAMAを明らかにすることを試みた.先行研究では恒常法によってMAMA測定が行われてきたが,結果の心理測定関数への当てはめが不適切であり,ヒトの平均的なMAMAを推定できているとするには至っていないと考えられる.そこで,本研究では心理物理測定法を適応法の一種であるQUEST+法に変更した上でMAMAの再検討を行った.心理物理実験は水平面上において被験者と1.5 mの等距離で円運動する音像の移動方向を回答させるものとし,ヘッドホンを使用したVRサウンドを用いて実施した.なお,移動音の移動速度は8[deg/sec]で一定とした.この実験には9人の被験者が参加し,MAMA測定値の平均は提示方位0[deg](正面)で3[deg],45[deg]で14[deg],90[deg](真右)で36[deg]となった.この結果から,現実空間と比べて仮想空間の方が広帯域雑音のMAMAが大きくなり,その増加の仕方は線形であることが明らかとなった.また,心理物理測定法をQUEST+法に変更した結果,恒常法と比較して測定精度には差が見られなかったものの,信頼区間の計算処理に必要となる手続きが少ない分,QUEST+法を用いた方が測定効率が高いと結論付けられた.

著者関連情報
© 2022 日本シミュレーション学会
前の記事 次の記事
feedback
Top