フッ素化アルキル基を含む物質(PFAS)は,撥水・撥油性などの特異な物性を示し,世界中で様々な材料に使用されているが,その物性発現機構は長年不明なままであった.近年になって,PFASの物性を統一的に説明するために,階層双極子アレーモデルが提案された.このモデルによれば,フッ素化アルキル鎖の集合構造は鎖長によって異なり,PFASの特異な性質を理解する鍵となる.本研究では,全フッ素化アルキル鎖CF3(CF2)mCF3の単分子膜に対して分子動力学シミュレーションを実行し,分子の集合構造と鎖長の関係を調べた.その結果,m = 5, 6の系では分子は無秩序な配置で液体のような挙動を示すのに対し,m ≥ 8の系では分子が2次元ヘキサゴナル構造に配列し,固体のような挙動を示した.m = 7の系は,これら2つのグループの中間的な振る舞いを示した.今回の結果は,PFASの特性を理解する上で,鎖長の違いを考慮することが重要であると示唆している.
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