抄録
膿胸を伴う胸膜炎患者 (70歳, 男性) の胸水中に活発な運動性を有する多数のトリコモナスを見いだし, 虫体の計測値や鞭毛の形態等から口腔トリコモナスTrichomonas tenaxと同定した。また同時に多数の大腸菌Escherichia coliも検出された。これらの原虫や細菌の本症例における詳細な関わりについては不明である。日本におけるT.tenaxの症例は1894年以来第2例目に当たる。口腔トリコモナスに対してMetronidazoleを, 大腸菌にはCephalothl, CefotiamおよびCefsulodinを用いて治療を試みたところ, 前者は入院4日後に, 後者は11日後に, それぞれ胸水中から消失し, その後の再発はなく, 患者は入院38日後に退院した。口腔トリコモナスと大腸菌の胸腔内への侵入経路は明らかでないが, 自然気胸や患者の同性愛癖が何らかの形で関与していることも考えられる。