Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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大平肺吸虫の生態学的研究
1. 東海地方の6河川産カニにおける本種メタセルカリア検出成積
松尾 喜久男真喜屋 清
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1985 年 13 巻 4 号 p. 307-313

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抄録
1982年10月から1985年9月の3年間に, 伊勢湾に注ぐ三重, 愛知県下の揖斐川, 長良川, 木曾川, 日光川, 新川, 庄内川の河口周辺に生息するカニを採集し, 大平肺吸虫メタセルカリアの検出を行った。採集されたカニの大部分はクロベンケイ, ベンケイガニの2種で, 他に少数のアシハラガニ, ハマガニが採集された。揖斐川, 長良川, 木曾川では河口から約5.5~13km間の17地点のクロベンケイ, ベンケイガニから本種メタセルカリアが検出された。地点別感染率はクロベンケイ2.7~100%, ベンケイガニ0.9~100%であった。特に河口から約6~11km問のカニに高い感染率 (41.7~100%) が認められ, 陽性カニ1個体当たりのメタセルカリア最大寄生数は, クロベンケイの255虫体であった。1958年のこの地域における調査では, 調査範囲が小さく, 長良川河口付近の2地点産のカニにメタセルカリア寄生を認めたに過ぎなかったが, 今回の調査により, 揖斐川, 長良川, 木曾川流域に広大な大平肺吸虫分布地のあることが初めて明らかになった。他の3河川においては調査地点が非常に少なかったが, 新川では初めて本種の分布が認められた。なお, 過去に分布を認めた日光川では陰性であった。
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© 日本熱帯医学会
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