Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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インドネシア国北スマトラ州の1村落における小児を対象としたクロロキンとプリマキンによる熱帯熱マラリアのコントロールの試み
松岡 裕之石井 明WILLEM PANJAITAN
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1987 年 15 巻 4 号 p. 257-268

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抄録
インドネシア国北スマトラ州の海岸に面した1村落で, 15歳以下のマラリア患者を集中的に診断・治療することでマラリアのコントロールを試みた。この村には熱帯熱と三日熱マラリアが流行しており, 例年7-9月には原虫陽性率は27~61%に上昇し, うち熱帯熱マラリア原虫が50~86%を占める (1980-83) 。1983年9月から1984年7月まで, active case detectionを6回, 学童の集団採血を4回行い, 原虫陽性者にクロロキン3日間, プリマキン3日間 (熱帯熱) または5日間 (三日熱) を投与した。プリマキンの使用にあたってはG6PDのスクリーニングを同時に行い, 欠損者には投与しなかった。
11カ月にわたる活動の間に, 学童における脾腫率は14.3%から0.9%に, 熱帯熱マラリア原虫陽性率は11.6%から1.7%に低下した (p<0.001) 。最終的に1984年7月の原虫陽性率は12.3%にとどまり, 熱帯熱マラリア原虫はそのうち14.3%であった。この時の原虫陽性者の多くは低い原虫濃度の三日熱マラリアで, 再発例または治療不十分例と考えられた。この村では熱帯熱マラリアの生殖母体保有者は低年齢層に多く, その血中濃度も高い傾向であった。小児を対象とした診断・治療活動により生殖母体保有者が効率よく治療され, 蚊による伝播も低下したものと考察した。
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