抄録
インドネシア国北スマトラ州の海岸に面した1村落で, 15歳以下のマラリア患者を集中的に診断・治療することでマラリアのコントロールを試みた。この村には熱帯熱と三日熱マラリアが流行しており, 例年7-9月には原虫陽性率は27~61%に上昇し, うち熱帯熱マラリア原虫が50~86%を占める (1980-83) 。1983年9月から1984年7月まで, active case detectionを6回, 学童の集団採血を4回行い, 原虫陽性者にクロロキン3日間, プリマキン3日間 (熱帯熱) または5日間 (三日熱) を投与した。プリマキンの使用にあたってはG6PDのスクリーニングを同時に行い, 欠損者には投与しなかった。
11カ月にわたる活動の間に, 学童における脾腫率は14.3%から0.9%に, 熱帯熱マラリア原虫陽性率は11.6%から1.7%に低下した (p<0.001) 。最終的に1984年7月の原虫陽性率は12.3%にとどまり, 熱帯熱マラリア原虫はそのうち14.3%であった。この時の原虫陽性者の多くは低い原虫濃度の三日熱マラリアで, 再発例または治療不十分例と考えられた。この村では熱帯熱マラリアの生殖母体保有者は低年齢層に多く, その血中濃度も高い傾向であった。小児を対象とした診断・治療活動により生殖母体保有者が効率よく治療され, 蚊による伝播も低下したものと考察した。