抄録
ナイジェリア, アナンブラ州アバカリキ地区において, ギニアワーム症の診療および調査を行った。63名の患者の職業別内訳は, 農業が76%, 学生が19%で, 平均年齢は21歳であった。患者に対してはアルベンダゾール内服により治療を行い, 虫体が排泄されるまで観察を続けた。虫体は平均5日で排泄され, その後皮膚の潰瘍部は治癒に向かった。溜め池, 浅井戸, 深井戸, 河川水, 水道水の5群に分けて飲料水の水質検査を行った結果では, 溜め池, 浅井戸, 河川水の汚染がひどく, Dracunculius medinensisの中間宿主であるミジンコも多数認められ, 容易に感染しやすいことが窺われた。小学校においてはギニアワーム症のために欠席する児童が多く (全体の59.6%), この疾患が就学率低下や農業生産低下など社会・経済的に及ぼす影響が大きいことが示唆された。この疾患は飲料水の衛生と密接に結びついたもので, その対策は極めて重要な課題である。現在, 深井戸の建設が望まれているが, 住民に対する衛生教育も同時に進めていく必要があると思われる。