我が国の牛に寄生する
Onchocerca gutturosaの仔虫として報告されていた二型の仔虫 (X, Y) を, 牛舎で吸血した直後のブユの中腸と一部は直接牛の皮膚から得て, ブユの胸部へ実験的に感染させ, 第三期幼虫への発育の有無を調べた。その結果, 体長が短く, 尾部を強く巻く特徴を有するX型仔虫は, キアシツメトゲブユとアオキツメトゲブユの胸筋で, 体長が1,100-1,230μmと長い第三期幼虫へ発育した。一方, 体長が細長く, 尾部を巻いていないY型は, 一例だけであるが, ヒメアシマダラブユで, 体長が478μmの第三期幼虫へ発育した。第三期幼虫の形態観察から, 前者は, 既知のいずれの種とも異なる未記録種で, 後者は
O.lienalisと思われる。すなわち, 今回の実験により, X型仔虫は, 我が国の牛から既に報告されている
O.gutturosaおよび
O.gibsoniとは明らかに異なる未記録種の仔虫であることが示された。一方, Y型仔虫のなかには,
O.gutturosaおよび
O.gibsoniの存在を否定はできないが,
O.lienalisが含まれていることが強く示唆された。
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