Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
Online ISSN : 2186-1811
Print ISSN : 0304-2146
ISSN-L : 0304-2146
タイ産ヒロクチ肺吸虫Paragonimus haterotremusのラツトおよびマウスへの感染試験
杉山 広柴原 壽行片平 じゅん堀内 貞治冨村 保吾妻 健波部 重久川島 健治郎PUNSIN KETUDATSODSRI THAITHONG
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 18 巻 4 号 p. 295-300

詳細
抄録
タイ産ヒロクチ肺吸虫のラットおよびマウスへの感染試験を行い, 宿主適合性を調べた。ラット16頭およびマウス3頭に本虫のメタセルカリアを15-20個ずつ経口投与し, 投与後78日あるいは253日に剖検したところ, 虫体の回収率はラットでは平均40.8% (投与後78日に剖検) あるいは5.3% (同253日に剖検), マウスでは平均40.7% (同78日に剖検) であった。ラットから回収した虫体の約89%は幼若虫であり, いずれも骨格筋から検出され, 成虫は胸腔から検出された1隻 (回収虫体の約2%) に過ぎなかった。一方マウスから回収した虫体は総て幼若虫であり, その約88%が骨格筋から検出された。試験ラットあるいはマウスの骨格筋由来の幼若虫を, 本虫の好適終宿主であるネコに経口投与したところ, 幼若虫の95% (ラット由来の幼若虫) あるいは100% (マウス由来の幼若虫) が感染して肺に虫嚢を形成し, 投与後49日に糞便内排卵を開始した。以上の成績から, タイ産ヒロクチ肺吸虫のラットおよびマウスに対する宿主適合性は低いものの, 鶴歯類は待機宿主として本虫の生活環の維持に主要な役割を果たし得ると思われた。また, 鶴歯類を対象とした本虫感染状況の野外調査では, 骨格筋からも虫体検出を試みる必要があると考えられた。
著者関連情報
© 日本熱帯医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top