Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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ナイジェリアにおけるオンコセルカ症の疫学
BERTRAM E. B. NWOKE塩飽 邦憲高橋 弘
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1991 年 19 巻 2 号 p. 191-201

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抄録
オンコセルカ症はナイジェリアに広く流行しており, 社会経済的に多大の悪影響を及ぼしている。ナイジェリアにおけるオンコセルカ症の分布, および合併症についての知見は不十分であるため, これまでに報告された研究を整理し, ナイジェリアにおけるオンコセルカ症の記述疫学的な記載を行った。ナイジェリアの大部分の地区は, WHOの基準にしたがうとオンコセルカ症の中等度の流行地であるが, サバンナ地帯に高度流行地が点在する。地区でのオンコセルカ症の感染率における性差は, 流行の程度に依存し, 低流行地で性差が著しく, 男性で高率である。また, 感染率は加齢とともに増加する。視認および触知可能な皮下腫瘤は, 腰部に多く存在する。熱帯雨林地帯ではミクロフィラリア密度が少ないにも関わらず, 皮下腫瘤を多く認めるが, サバンナ地帯ではミクロフィラリア密度が多いにも関わらず, 皮下腫瘤は少ない。ミクロフィラリアは宿主の免疫反応と相まって様々な皮膚病変を引き起こす。皮膚掻痒症の発現は熱帯雨林では一般的であるが, サバンナ地帯では一部に留まる。様々な眼科病変は, 死亡したミクロフィラリアによって引き起こされることが明らかになってきた。眼, 特に前房の病変は, 熱帯雨林地帯よりもサバンナ地帯に多い。ナイジェリアにおけるオンコセルカ症は, ミクロフィラリア自身の性質および宿主の免疫反応, 生物気候学的因子, 伝播するブユの亜種の多要因によって複雑な疫学像を呈している。
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