Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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わが国におけるDermatobia hominisによるハエ蛆症の輸入例
影井 昇平間 敬文小川 義典戸賀 宣好高岡 正敏倉橋 弘
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1974 年 2 巻 3-4 号 p. 181-185

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抄録

昭和48年7月から翌年3月までブラジル, サンパウロ州で植林と牧場仕事に従事した神奈川県津久井町の男子 (70才) が, 昭和49年2月頃ブラジルで蚊に吸血された左腕及び左胸部の後がシコリとなり, 痛みを伴ったことから, 帰国後津久井赤十字病院を訪れ, 左手部・左側胸部肉芽腫症の診断名で患部が切除され, 割が入れられた所虫体が発見された。本虫は体の前半部が後半部より肥大しており, 1対の口鉤は良く発達して太い鉤状をなし, 体表をおおう棘は体前半部で特に太く, 短かく, 先が曲がっていることからDermatobia hominisと同定された。
このような流行地以外での症例は1912年にBuchがアメリカ合衆国で報告して以来各地で報告され, 特に航空機の急激な発達をみた1960年以降は世界各地でみられている。従って, 流行地以外での本症の診断技術と治療法については認識しておく必要がある。
本症例はわが国におけるDermatobia hominisによる皮膚ハエ蛆症の最初の輸入報告例である。

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