Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene
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日本住血吸虫症に対するEMBAY8440 (Praziquantel) の臨床的使用経験
加茂 悦爾石崎 達
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1979 年 7 巻 1 号 p. 23-33

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抄録
西ドイツのMerck及びBayer A.G.により新たに開発された住血吸虫駆虫剤EMBAY8440 (Praziquantel) を日本住血吸虫症患者に対して使用し, その副作用を二重盲検法によりチェックした。同薬剤の特徴は一日のみの経口投与ですむことである。
対象は宿主体内の成虫生存の可能性ある皮内反応高閾値患者48名を抽出し, これを半数 (24名) ずっのプラセボーと投薬群に二分した。各群はさらに1回投与, 2回投与 (各6名) および3回投与 (12名) の3群に分けた。これら各群について副作用を検討し, 同薬剤使用時における耐容性の臨床的評価を下した。一回投薬量は20mg/kgで食後直ちに水で内服させた。
1回または2回投与群では副作用はほとんどなかったが, 3回投与群ではかなり増えた。主な副作用は二つあり, 第一は頭重または眠気などの中枢神経系の自覚症状と, 第二は一過性の軽度の貧血であった。
しかしながら, 耐容テストの評価では, 不良は1例もなかった。評価優秀の症例数は対照群に対しEMBAY投与群が少数であったが, 評価良好の症例数は対照群よりEMBAY群の方が有意に多かった。
従って, この新薬は自覚症状と造血機能に注意すれば, 臨床的に使用し得ると結論できた。ただし本研究では対象の検便排卵者が少なく, しかも微量排卵のため, 駆虫効果の判定は他の研究に期待した。
本研究の意義は, 住血吸虫症患者に対してEMBAY8440を将来一般的に使用し得る基礎と展望を与えた事にある。
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