2020 年 12 巻 p. 46-58
農山漁村の多くで託齢化と人口減少が進行する中で, 進学・就職・結婚等で他出した家族員が定期的に帰省して老親の生活をサポートする機能に注目が集まっている. 現状の地域社会研究や村落研究では,かかるサポートの存在を指摘するのにとどまっていて,サポートの有無を規定する背景要因は十分探索されていない. 本稿では, 全国有数の高い水準で高齢化が進行する山間地域で実施した調査の結果を用いて,過疎山村における他出家族員の「生活サポート帰省」の実態とその有無の規定要因を明らかにする. 他出家族員の生活サポート帰省がある世帯は4分の1程度であり,その有無に対しては,在村家族員(親)の性別,年齢,世帯構成,近所づきあいの程度,他出家族員(子)の居住地が影響していた. つまり,男性高齢者の単独世帯, 近所づきあいの少ない世帯, 1時間圏内に居住する他出家族員がいない世帯では,他出家族員の生活サポート帰省がない傾向がうかがえた.