抄録
症例は87歳, 男性. 2004年6月3日頃より全身〓怠感, 口渇, 多飲, 多尿が出現. 6月9日近医受診し, 血糖608 mg/dl と著明な高血糖を認め, 6月10日当院に入院した. 入院時尿ケトン体強陽性, 血糖712 mg/dl であり, 動脈血液ガス分析では代謝性アシドーシスであった. 糖尿病性ケトアシドーシスの診断でインスリン治療を開始し, 症状は改善した. 入院時のHbA1cは7.5%であり, これまでに糖尿病を指摘されたことはなかった. また抗GAD抗体は陰性であり, 尿中および血中Cペプチドは測定感度以下と著明なインスリン分泌の低下を示していた. HLA class IIでは1型糖尿病疾患感受性のハプロタイプとの一致を認めた. 以上より, 本症例は劇症1型糖尿病であると診断した. 本症例は, 検索しえた範囲では本邦の同疾患の最高齢であった.