糖尿病
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原著
高齢者の呼吸器感染症治療における強化インスリン療法の効果
松本 一成中村 寛最勝寺 弘恵藤田 成裕
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2007 年 50 巻 4 号 p. 235-240

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抄録

高齢者の急性呼吸器感染症(肺炎,急性気管支炎)の治療の際に,血糖値を厳格にコントロールすることの有用性を検討した.2002年1∼6月(介入年)に入院した70歳以上の呼吸器感染症患者79例中,入院時の随時血糖値が130 mg/dl以上の43例に強化インスリン療法を施行し,血糖値を193.6±63.5 mg/dlから102.6±20.9 mg/dlに低下させた.強化インスリン療法の効果を検討するため,2001年1∼6月(観察年)に入院した84例のデータと比較した.観察年においては,血糖値130 mg/dl以上の高血糖群は正常血糖群と比較して,死亡率や合併症発生率に有意差を認めなかったものの,発熱期間と抗菌薬投与期間が長い傾向にあり,在院日数は有意に長かった(31.1±22.3 v.s. 21.2±15.4日,p<0.05).介入年においても,インスリン治療された高血糖群と正常血糖群の予後に有意差は認めなかった.しかしながら,両群間での発熱日数,抗菌薬投与日数はほぼ等しく,在院日数にも有意差が無くなっていた(19.7±11.5 v.s. 18.0±15.1日,p=0.18).そして,強化インスリン療法による高度な低血糖の出現は認めなかった.結局,厳格な血糖コントロールを行った介入年には,観察年と比較して,高齢者の急性呼吸器感染症の発熱期間と抗菌薬投与期間の短縮傾向を示し,在院日数を有意に短縮した.このことから,厳格な血糖コントロールが呼吸器感染症からの患者の回復を早める可能性が示唆された.

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© 2007 一般社団法人 日本糖尿病学会
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