抄録
1型糖尿病(DM)の自己免疫性甲状腺疾患(AITD: バセドウ病またはホルモン補充療法を要する橋本病)合併率および発症様式について,川井クリニックを受診した全1型および2型DM患者3,540名を対象に検討した.1型DM 159名中,54名(女性27名)が緩徐進行性1型DM (SPIDDM), 105名(女性61名)が急性発症1型DMであった.1型DMのAITD合併率は8.8%で,2型DMの0.8%に比し有意に高かった.SPIDDMのAITD合併率は18.6%, 急性発症1型DMのAITD合併率は3.9%であり,いずれも女性での合併率が高かった.抗GAD抗体(GADA)陽性1型DMのAITD合併率は14.2%, 陰性では1.5%で,特にGADA価≥50 U/ml群では,<50 U/ml群に比しAITD合併率が高かった.AITD合併の1型DM14名中,13名でAITDが先行発症していた.以上より,1型DM, 中でも女性,GADA陽性群,GADA高値群,SPIDDMでAITD合併率が高く,発症の順序としては大部分でAITDが1型DMに先行した.