抄録
症例は49歳,女性.IgA腎症による慢性腎不全のため38歳より血液透析を開始.42歳時,生体腎移植を施行.2008年1月(49歳)より尿蛋白が出現.腎生検で拒絶腎と診断され,ステロイドパルス療法を施行した.2月初旬より感冒様症状が出現.3月中旬に呼吸困難が増悪し当院泌尿器科に入院した.重症肺炎の治療中,第33病日,随時血糖840 mg/dl, ケトアシドーシスの状態となった.発症時HbA1cは6.2%, 膵外分泌酵素の上昇,血清CPR 0.3 ng/ml, GAD抗体,ICA抗体陰性より劇症1型糖尿病と診断した.HLA genotypeはDRB1*0405/DQB1*0401を認めた.発症時期にサイトメガロウイルス抗原の上昇を認めた.ステロイドや免疫抑制剤の内服により易免疫性となり,ウイルスの再活性化が生じ膵β細胞が傷害された可能性が示唆された.腎移植後の免疫抑制療法中の劇症1型糖尿病の合併は稀であり,ここに報告する.