抄録
症例は39歳女性,平成12年より1型糖尿病と診断され加療中であったが,インスリンを自己中断するなどで血糖コントロール不良であった.2010年1月31日に全身倦怠感,嘔吐がみられ,自己判断によりインスリンを減量,水分補給しながら安静にしていた.同2月1日にかかりつけ医が往診,糖尿病ケトアシドーシスと判断し,当院へ救急搬送された.2日目の検尿にて沈渣に多数の酸性尿酸アンモニウム結晶がみられた.この結晶は数日で減少し,当初異常を呈した尿細管機能マーカーも改善した.酸性尿酸アンモニウム結晶は結石形成速度が速いとされている.また,小児の急性胃腸炎感染時などにおいて酸性尿酸アンモニウム結晶による腎後性急性腎不全例の報告が近年増えている.糖尿病ケトアシドーシスにおける酸性尿酸アンモニウム結石症の報告はこれまでないが,結晶の形成機序を考えれば糖尿病ケトアシドーシスではその危険性は高く,尿検査による結晶の検出は意義あると考え報告する.