抄録
当院でメトホルミン(以下Met)を10年間内服した2型糖尿病(DM)で,腎障害,肝障害,飲酒歴がないにも関わらず,一度でも乳酸が基準値を超えたDMは43名.乳酸上昇の主因が,Metによる代謝異常か,ピルビン酸を介した異常かを,乳酸/ピルビン酸比(以下L/P比)を用いて後ろ向きに解析し,DMの食事負荷(N=30)や,運動負荷(N=6)とも比較した.結果:43名の乳酸(16.2±4.7 mg/dl),ピルビン酸(0.99±0.3 mg/dl),血糖(217±71 mg/dl)は,乳酸が基準値内のMet内服DM(N=58)の乳酸(12.8±3.2 mg/dl),ピルビン酸(0.74±0.25 mg/dl),血糖(186±83 mg/dl)より有意(P<0.01)に高かったが,L/P比に有意差はなかった.食事負荷では,ピルビン酸の上昇に伴い乳酸も上昇したがL/P比の増加はなく,運動負荷では乳酸,ピルビン酸,L/P比ともに増加した.43名の乳酸上昇は,L/P比が上昇した危険な代謝異常でなく,上昇したピルビン酸と血糖を介した上昇と考えられた.