糖尿病
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症例報告
血中ミチグリニド濃度高値を呈した遷延性重症低血糖の1例
大山 貴子秋山 孝輝西川 健一郎柳川 達生
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2012 年 55 巻 3 号 p. 199-203

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抄録

ミチグリニドは,経口投与後の最高血中濃度到達時間が早く消失半減期が短い.また肝代謝のため腎機能低下例でも血中に残存しにくく,これまで遷延性低血糖の報告はない.今回我々は,高齢慢性腎不全患者でミチグリニドによる遷延性低血糖の症例を経験したので報告する.症例は80歳女性.73歳時に右腎腫瘍切除術をうけている.50歳頃,2型糖尿病と診断され,75歳よりミチグリニドによる治療が開始となった.受診当日の朝食は摂取し,薬剤も通常通り内服した.昼前に低血糖性昏睡で当院に搬送された.BMI 14.9 kg/m2,CCr 18.0 ml/min.ミチグリニドを中止し経過観察にて入院としたが,最終内服30時間後に昏睡をきたした.昏睡時の血糖値15 mg/dl,CPR 8.3 ng/ml,IRI 17 IU/lで,ミチグリニド血中濃度は741.3 ng/mlと著明高値よりミチグリニドによる遷延性低血糖と診断した.グルクロン酸抱合体濃度は低値ではなく,主要代謝経路であるグルクロン酸抱合障害はないと考えた.腎機能低下のみでは遷延性低血糖を説明できないため,薬物代謝酵素の異常を考慮しDMET PLUS Premier Pack(Affymetrix社,米国)にて薬物代謝遺伝子マーカーを検討したが,原因を特定できなかった.ミチグリニドにより遷延性の重篤な低血糖をきたした初の症例と思われ報告した.

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© 2012 一般社団法人 日本糖尿病学会
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