抄録
症例は38歳女性.父,兄に糖尿病あり.1歳時に,21水酸化酵素欠損症(塩類喪失型)と診断された.成人期はデキサメタゾン補充となり2.5 mg/日まで増量され,体重が増加した.34歳時HbA1c上昇,グリメピリドが開始されたが血糖コントロールが悪化,入院となった.クッシング徴候を認めた.糖尿病性細小血管症,動脈硬化は認めず,高インスリン血症を呈した.薬剤性クッシング症候群,ステロイド糖尿病と考え,グリメピリドを中止,メトホルミンとボグリボースに変更.ステロイド補償を一部ヒドロコルチゾンに変更後,体重減少,血糖コントロール改善を認めた.21水酸化酵素欠損症のステロイド補償量は,ACTH,アンドロゲン過剰を防ぐ最低限の量が望ましい.加齢,肥満,糖尿病家族歴など2型糖尿病リスク因子を持つ患者では,ステロイド過量補償による糖尿病発症リスクも高く,ステロイド補償療法に細心の注意が必要である.