糖尿病
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症例報告
顕性腎症の寛解と頸動脈プラークの退縮を認めた2型糖尿病の1例
川原 順子高田 裕之平岩 善雄
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2012 年 55 巻 7 号 p. 463-469

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抄録

症例は48歳女性,全身浮腫と口渇あり.HbA1cが12.8 %(以下HbA1cはJDS値で表記),随時血糖503 mg/dl,血圧210/138 mmHgと無治療の糖尿病と高血圧症であり,全身の浮腫と胸腹水を認めた.血清アルブミン2.7 g/dl, Cr 0.9 mg/dl, LDL-C 197 mg/dl, 1日尿タンパク1.24 g/日,福田分類BII~IIIの糖尿病性網膜症,頸動脈エコーで左内頸動脈の狭窄と,左総頸動脈に厚さ2.5 mmの低エコーのソフトプラークを認めた.アカルボース,ピオグリタゾン,シルニジピン,テルミサルタン,アトロバスタチン,シロスタゾール,エイコサペンタエン酸で治療した.尿タンパクは陰性化し治療開始5年後に正常アルブミン尿のレベルへ改善した.また同時にソフトプラークの退縮と高輝度プラークへの変化を認め,左総頸動脈のcarotid intima-media thickness(CIMT)は1.5 mmとなった.糖尿病性腎症の患者においては腎症の寛解を目指すとともに,早期から積極的な脂質治療を行い動脈硬化の退縮も治療目標にすべきと考えた.

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© 2012 一般社団法人 日本糖尿病学会
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