抄録
急激な体重減少と血糖コントロール悪化を契機に発見された,膵癌,悪性末梢神経鞘腫,早期大腸癌を合併した2型糖尿病患者の1例を報告する.症例は68歳女性.63歳時に糖尿病と診断され,以後内服加療でHbA1c(NGSP値)6 %台とコントロール良好であった.しかし,最近5ヶ月間でHbA1c 3.5 %の上昇と,9 kgの体重減少を認め,精査加療目的で当科紹介入院となった.血液検査上CA19-9が175 U/mlと高値であり,悪性腫瘍を疑い,胸腹部造影CTを施行した.膵頭部癌と胸壁の悪性末梢神経鞘腫が発見され,膵頭十二指腸摘出術と胸壁腫瘤摘出術を同時施行,転移のない比較的早期の段階で完全切除しえた.また,術前下部消化管内視鏡で発見した早期大腸癌は内視鏡的粘膜切除術により完全切除しえた.急激な体重減少と血糖コントロール悪化を認めた場合,悪性腫瘍の存在も念頭にすべきことを示唆する症例であった.