2012 年 55 巻 9 号 p. 693-697
症例は74歳女性.67歳時に緩徐進行1型糖尿病と診断され,インスリン療法が開始された.インスリンは徐々に増量され,98単位/日投与にてもHbA1c(JDS)8.7 %と不良である一方,食後に低血糖を来たすため入院となった.体重の減量に伴いインスリン投与量も減少したが,空腹時高血糖が持続し,食後の低血糖が生じた.基礎インスリンを順次,デテミル34単位/日,中間型リスプロ30単位/日,および持続皮下インスリン注入(CSII)(リスプロ)16.8単位/日に変更した.デテミルに比べ,CSIIにより血糖値は良好に低下した.そこで,CSIIによるリスプロ投与と,中間型リスプロ皮下1回投与を比較した.CSIIによるリスプロ投与では,中間型リスプロに比べ,より少量で血中リスプロインスリン濃度が上昇し,血糖値も改善した.同じインスリンでも皮下における滞留時間が長い製剤ほど血中への移行が阻害されており,インスリンが皮下組織で吸収が障害されている可能性が示唆された.