抄録
症例1は93歳男性.50歳時より2型糖尿病のため近医通院中であったが,80歳頃より突発する腹痛・腹満を頻回に自覚し数カ所の病院を救急受診していた.症例2は84歳女性.70歳時より2型糖尿病のため近医通院中であったが,80歳頃より突発する腹痛・腹満・嘔吐を認め当院を受診していた.これらの症例は詳細なCT画像の検討により胃軸捻転症と診断するに至った.さらに本疾患は開腹や腹腔鏡手術で治療されることが多いが,本2症例は捻転を防止するため胃瘻の造設で胃壁を固定した.これにより経口摂取再開後も再発を認めず,胃瘻の造設は手術に代わる有効な治療法と考えられた.胃軸捻転症は稀な疾患であるため,本疾患が念頭にない場合は画像をみても診断に至らない事が多い.また当院で経験した2症例とも2型糖尿病を合併していた.糖尿病患者で突発する腹痛や腹満といった症状を認めた場合,本疾患の可能性も念頭におくべきであると考え報告する.