2015 年 58 巻 12 号 p. 888-894
症例は62歳男性.2002年に健診で高血糖を指摘されるも放置していた.2013年7月から口渇,多飲,多尿の症状が出現した.近医を受診し,空腹時血糖値150 mg/dl, HbA1c 7.5 %から糖尿病と診断された.経口血糖降下薬が開始されたが,症状改善を認めず尿崩症合併が疑われ当科紹介され精査入院した.高張食塩水負荷+ピトレシン負荷試験,下垂体MRI検査から中枢性尿崩症と診断し,DDAVP内服にて症状の改善を認めた.血清IgG4の上昇を認めており,IgG4関連下垂体炎の可能性が示唆された.糖代謝は尿崩症加療後,耐糖能障害まで改善を認めた.中枢性尿崩症と糖尿病の合併は稀であるが,多くの症例がDDAVP加療後に耐糖能異常の改善を認める.尿崩症に伴う脱水,高浸透圧血症,バソプレシン受容体のV1a, V1b受容体作用の低下,口渇からの清涼飲料水の多飲等の複数の要因が血糖上昇の原因と考えられる.