糖尿病
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症例報告
短時間作用型エキセナチド3回注が著効した肝硬変に伴う肝性糖尿病の1例
小木曽 和磨郡山 暢之大保 崇彦時任 紀明西尾 善彦
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2017 年 60 巻 7 号 p. 498-506

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抄録

67歳男性.57歳時にアルコール性肝硬変を指摘されている.今回,肝性糖尿病(HbA1c 9.4 %)のため入院下で強化インスリン療法を開始した.肝硬変に伴う著明な食後高血糖が遷延しリスプロ64単位/日でも抑制が不十分であった.経過中,局所インスリンアレルギーを認めたため,インスリンを中止しリラグルチド0.9 mgとボグリボース0.9 mgを開始した.食後高血糖が遷延したためエキセナチド5 μgの3回注に変更したところ,毎食後の血糖が著明に改善した.アセトアミノフェン試験やテストミール負荷の結果,エキセナチドによる胃排出遅延およびグルカゴン分泌の抑制がその主因と考えられた.またエキセナチドの食後血糖抑制効果の予測に肝糖放出能を評価するグルカゴン試験が有用である可能性が推察された.食後高血糖を特徴とする肝硬変に伴う糖尿病において,短時間作用型エキセナチドの3回注は有用である可能性が示唆された.

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© 2017 一般社団法人 日本糖尿病学会
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