2020 年 63 巻 3 号 p. 139-145
症例は69歳女性.63歳時に2型糖尿病と診断され,経口血糖降下薬で加療されていた.68歳時にHbA1c 12.6 %と血糖コントロールの悪化を認め,入院となった.強化インスリン療法とシタグリプチンの併用にて血糖降下が得られたが,持続血糖モニターにて夜間の無自覚低血糖を認めた.また,インスリン療法開始直後に測定されたインスリン抗体が陽性であり,Scatchard解析では親和定数K1= 0.072(1/10-8 M),結合部位数B1= 0.962(10-8 M)と,低親和性低結合能であった.基礎インスリンを中止し,シタグリプチンをGLP-1受容体作動薬デュラグルチドに変更することで血糖は改善し,追加インスリンは継続されたがインスリン抗体は減少を認めた.