2022 年 65 巻 1 号 p. 17-19
20年来の科学技術発展の恩恵で分子生物学の解析技術は不断に進歩し,これに伴って糖尿病研究をめぐる風景も大幅に変化している.その間の研究成果の一つはインスリン抵抗性の本体が炎症であることの解明であり,その形成には種々の液性因子や神経学的ネットワークを介した多臓器間のクロストークが大きな役割を果たしている.また細胞レベルにおいてはゲノムの全体像が明らかとなり,非コード遺伝子とタンパク質コード遺伝子とが複雑に協調作用をしながら最終的に個体の生命現象を制御しているという像が明らかとなりつつある.本稿ではそうした成果の代謝分野における具体例を挙げるとともに,将来の糖尿病研究の方向性も併せて提示したい.