糖尿病
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メチマゾール治療歴を有する甲状腺機能亢進症患者に認められたグルカゴン自己抗体
三家 登喜夫近藤 溪森山 悦裕南條 輝志男猪尾 和弘宮村 敬
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1983 年 26 巻 2 号 p. 147-154

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抄録
メチマゾール (MMI) 治療歴を有する甲状腺機能亢進症患者の血漿中に, グルカゴン自己抗体を検出した. 患者は47歳の女性で, 1977年6月に甲状腺機能亢進症と診断され, 約4ヵ月間MMIによる治療を受けeuthyroidとなった. 検査成績は, OGTT正常型, インスリン抗体 (-), pancreatic polypeptide抗体 (-) であった. 1980年4月に採取した患者の血漿蛋白は125I-glucagonと異常に高く結合することが, polyethylene glycol (PEG) 法 (specific binding %患者;13.2%, コントロール;1.2%) および, ゲルが過法にて判明した. この結合は, 豚グルカゴンおよび豚グリセンチンによってのみ特異的に置換されるとともに, 酸性状件下では結合の解離が認められた, 硫安塩析法および沈降法にて, 血漿蛋白中のグルカゴン結合物質はIgG (L-chainはK-type) であることが判明した. 本症はグルカゴン含有製剤投与の既往がないことより, 血漿中のグルカゴン結合物質は自己抗体であると考えれる. なお血中に存在するグルカゴン結合抗体に起因すると思われる臨床症状は認められなかった. また本症以外の甲状腺疾患患者68名 (MMI治療IP状腺機能亢進症36名) 中3名の血漿中にPEG法にてグルカゴン結合抗体の存在が認められた. これらは全員甲状腺機能亢進症でMMIにて治療中の患者であった.
以上より, 甲状腺機能亢進婚患者の血漿中に検出されたグルカゴン自己抗体とMMIによる治療との問に何らかの関連性が示唆された.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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