抄録
最近6年間に東京女子医大病院にて血液透析 (HD) 導入をうけた糖尿病性腎不全患者47例のうち, 若年 (30歳未満) 発症インスリン非依存型糖尿病 (NIDDY) の細小血管障害の進展に関してretrospectiveに検討した. (1) HD導入例中のNIDDYの頻度: インスリン依存型糖尿病 (IDDM) 5例 (11%), NIDDY10例 (22%), 30歳以上発症インスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 30例 (63%). IDDMかNIDDYか明らかでないもの2例 (4%) であった. (2) 糖尿病発症より増殖性網膜症発見までの年数はNIDDY群10±3年, IDDM群15土3年, 腎症発見までの年数はNIDDY群11±3年, IDDM群15±4年, 高血圧発見までの年数はNIDDY群12土3年, IDDM群17±3年であり, いずれもNIDDY群では, IDDM群に比べ, わずかに短かい年数であった. またHD導入までの年数はNIDDY群13±3年, IDDM群19±2年であり, NIDDY群では, IDDM群に比べ, 有意 (p<0.05) に短かい経過であった.
以上のことから日本人の糖尿病性腎不全による血液透析導入例からの分析では, 若年発症イスリン非依存型糖尿病の細小血管障害の急速な進展・増悪はまれでないと思われた.